塩田ボランティアガイド連絡会
白い漆喰造りの「居蔵家」が建ち並ぶ塩田津は、平成17(2005) 年「重要伝統的建造物群保存地区」に選定。懐かしさを感じる景観と美しい町並みに心奪われます。塩田津はかつて長崎街道の宿場町として、また有明海の干満の差を利用した川港としても発達し栄えました。令和2(2020)年には、福岡・佐賀・長崎の8市で作る「砂糖文化を広めた長崎街道~シュガーロード~」が日本遺産に認定されました。塩田津も経由していたことから、この地でも砂糖・お菓子文化が生まれ、「逸口香(いっこっこう)」などの伝統菓子が今でも残っています。
塩田津の建物の一部は店舗として活用されており、レトロな雰囲気が魅力的。
塩田の人々の暮らしに残る歴史の跡を巡ります。
町並み交流所から常在寺仁王像から塩田津海岸[所要時間/約90分]
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1.塩田検量所跡
スタート場所は塩田津町並み交流集会所。ここは肥前陶土工業協同組合の事務所として利用され、塩田津に届いた陶磁器の原料の天草陶石を検量する検量所も設けられていました。車ごと重さを計ることができ、その計りは今も残っています。陶石はこの場所から塩田川沿いに並んでいた陶土製造所に運ばれていき、水車を使って砕きます。製造所は最盛期に60軒ほどあったといわれています。塩田川の恵みはさまざまな産業を支えていたんですね。
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2.塩田津荷揚げ場跡
川港として栄えていた塩田津では、焼物や焼物の原料、ニシンや昆布、生糸などの積卸しが行われていました。当時の川沿いには1階が蔵、2階が座敷の「座蔵(ざくら)」が建ち並んでいました。今でも残る石垣のそばまで船が来ており、広い川幅であったことがうかがえます。河川が整備されるまで、よく氾濫していたそうです。現在、塩田川は嬉野市社会文化会館裏にあり、塩田津そばの川は「浦田川」と呼ばれています。
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3.クレーン跡
港の跡には荷物の積卸しで使われていた「クレーン」が残っています。昭和39(1964)年に設置されたもので、廃港し使われなくなった今は、港であった当時を伝える貴重なものとして保存されています。
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4.旧下村家住宅
江戸後期に建てられたと推定される「くど造り」の町家。屋根がコの字型になっています。当時の町家には珍しく仏間・床の間が設けられています。2階の天井は高く、船を逆さにした形の「船底天井」になっています。旧下村家住宅は「家づくりのこだわり」が感じられました。明治12年に生まれた2代目・下村龍吉は、塩田地区の水資源確保に尽力しました。
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5.本應寺(ほんのうじ)
天正14(1586)年に開基の浄土宗の寺。庫裏には「御成の間(普段は非公開)」があり、本陣としても利用されていました。山門の前には仁王像や芭蕉塚があります。仁王像は丸みを帯びていてユーモラスな表情。優しい印象を受けました。
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6.御蔵(おくら)
藩の年貢米などを貯蔵した藩蔵。三棟あったうち残っているのは一棟で、移転再建されました。物資を積み出した荷上場を「御蔵浜」、御蔵と御蔵浜を結んだ小路を「御蔵馬場」といい、今なおその呼び名が残っています。
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7.御蔵の井戸
船旅の際の飲料用や、地域の人々に長年愛用されてきた井戸。井戸の周辺は整備され、地域の方が大切に保存しています。
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8.塩田石工と石造物
塩田の石工職人により、本應寺と常在寺の仁王像や町なかにある恵比須像など数多くの石造物が生み出されてきました。石造物に興味があり、塩田津を訪れる方も多いそうです。
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9.持ち送り
建物の軒先には彫刻が施された「持ち送り」があります。装飾は各家で異なっており、その違いを見比べるのも楽しいですね。米屋であった江口家には馬をつなぎとめていた金具も残っています。
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10.西岡家住宅
国指定重要文化財。安政2(1855)年に建てられた2階建て大型居蔵造りの町家。西岡家は廻船問屋として財をなし、この地域屈指の豪商でした。天井、柱、廊下や厠まで漆塗りで、座敷の欄間は美しい組子細工の装飾がなされています。とても豪華な造りで、往時の繁栄ぶりが伝わってきます。杉光家住宅と造りが真逆になっています。
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11.杉光家住宅
安政2(1855)年に建てられた3階建ての大型居蔵造り。主屋と三つの蔵は国登録有形文化財に制定されています。主屋は杉光陶器店として営業中。昔の面影を残す店内では器や地酒が販売されています。居蔵造りに見られる坪庭は、明り取りの役割を果たしていました。
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12.小柳家・田﨑家
塩田津で一番大きな居蔵造り。当初は「本釜屋」という呉服屋で繁盛しました。木造3階建てで、1階から3階まで高い吹き抜けが作られています。この吹き抜けを使って、長い帯をつるして展示していたそうです。向かいの吉富家は本釜屋の出店、数軒先には「新釜屋」があり、この通りだけで5軒の呉服店が存在しました。それだけこの塩田津には多くの方が暮らし、訪れていたんですね。
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13.塩田津の町並みと電車
塩田津にはかつて電車が走っていました。明治37(1907)年に馬が引く馬鉄が、その後は蒸気機関車となり、鹿島市の祐徳稲荷神社、武雄市方面へと多くの乗客や塩田津で荷揚げされた荷物を運びました。そして大正4(1915)年、県下で最初の電車が塩田から嬉野まで開通します。もともと狭かった塩田津の道幅は家曳きされて広くなり、嬉野市役所塩田庁舎の周辺は電車が曲がることができるよう道はゆるやかなカーブになっています。
地元の小学校の記念誌には、電車にまつわる思い出話が掲載されています。また塩田津から車で5分ほどの場所には、電車道や地元の人に「電車川」と呼ばれている場所があります。 -
14.常在寺(石段下)
和銅元(708)年、行基による開山で塩田では最古の寺。のちに真言宗御室派の総本山仁和寺の末寺となります。現在は目の前に県道28号線がありますが、長い石段から塩田川に向かってまっすぐ参道が伸び長崎街道につながっていました。石段の中腹には塩田のまちを見下ろすように仁王像が立っています。高さは2mを超え、遠くから見ても迫力があります。110分コースのガイドではこの石段を上り、境内を見学します。
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15.タナジ
川に面した家に階段がついています。昔は川の水を生活用水にしたり、野菜などを洗ったりしていました。この周辺は昔、夏にはたくさんのホタルが飛んでいたそうです。
※110分コースでは、塩田津の町並みと、塩田では最古の寺・常在寺の境内を巡ります。
セールスポイント
- 塩田津で生まれ育ったガイドもおり、子どもの頃の思い出を交えてお話してくださいます。
- ガイドの話から、塩田津を思う気持ちが伝わってきて、町を身近に感じられます。
- ガイドと一緒にお店を訪れると、店員さんとの距離がぐっと近く感じます。
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塩田津で育った馬場清さん。馬場さんの思い出話を聞きながら塩田津を歩くと、当時の情景が目に浮かぶようです。
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馬場清さんのガイドでは、さまざまな年代の写真を用いて案内してくださいます。この場所でどんなことが起きていたのか、写真から知ることができ興味深いです。
塩田ボランティアガイド連絡会
- 所在地
- 嬉野市塩田町馬場下甲694(NPO法人塩田津町並み保存会内)
- ガイド人数
- 10人
- 対応時間
- 9時から17時
- ガイド料金
- 1人から5人:ガイド1人500円、6人以上は一人追加につき+100円、20人以上は1団体につき2000円
- 受入人数
- 1人から上限なし
- 外国語対応
- なし(各みどころにある案内板には英語、韓国語での記載あり)
- 予約受付時間
- 9時から16時
- 申込期限
- 1週間前までに要予約
- お問い合わせ
- TEL.0954-66-3550、FAX.0954-66-3550
- メールアドレス
- shiotatsu1227@dune.ocn.ne.jp
60分コース(町並交流所~杉光陶器店まで)
所要時間/約60分、駐車場/あり(町並交流所駐車場)
110分コース(町並み交流所~常在寺境内~塩田津海岸)
所要時間/約110分、駐車場/あり(町並交流所駐車場)