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写真:大パノラマの絶景を望める基山山頂

基肄城/絶景の山に眠る歴史をひもとく旅

sora camp
2024年04月19日

福岡と佐賀の県境にある山、基山(きざん) 。山頂は、博多湾や筑後平野、遠くは雲仙まで一望できる絶景が広がっています。
今から約1360年前、この絶景の山には、古代の山城、基肄城(きいじょう)がありました。現在でも山の各所に遺跡が残っており、手に触れられる距離で古代の歴史を感じることができます。
今回は、基山全体に残る基肄城の遺跡と歴史的スポットと、基山町の旅を彩る『ミシュランガイド福岡・佐賀』掲載のグルメスポットをご紹介いたします。


このページ内で紹介しているスポット一覧

※すべて三養基郡基山町


 

基肄城とは?

写真:基肄城山頂部
基肄城山頂部

基肄城は、白村江の戦いに大敗した後の665年(天智4年)、中大兄皇子(後の天智天皇)により、大宰府防衛のため大野城とともに築城された山城です。城のある基山の山頂からその東峰にかけて、約3.9キロメートルの土塁・石塁(外部から敵が侵入するのを防ぐための砦)が山を囲むように築かれており、その広さは国内最大級の規模を誇ります。

写真山頂から見える筑後平野や雲仙
山頂から見える筑後平野や雲仙(写真中央奥)

博多湾や筑後平野、遠くは雲仙まで見通すことができる視界の良さを生かし、有明海からくる敵を警戒していたと言われています。お天気のいい日に限られますが、現在でも山頂の西側にある通天洞付近からは、雲仙の姿を見つけることができます。

基肄城にきたら必ず足を運びたい!歴史を感じる2大スポット

写真:山頂から見える大礎石群(写真中央)
山頂から見える大礎石群(写真中央)

基肄城跡には、歴史的な見所が豊富ですが、特に大礎石群と南水門跡は、その大きさや迫力が特に印象的です。これらの遺跡はガラス越しではなく、手で触れる距離で、古代の荘厳な姿をより深く感じることができます。

南水門跡〜約1360年前の石塁が残る

写真:南水門跡にある石塁
南水門跡にある石塁。写真右側に約1360年前の石塁が残っていますが、写真左側の積み直された部分とは、大きさや色などが異なります。

JR基山駅から車で約15分のところにある南水門跡。保存修理事業により一部積み直されましたが、約1360年前に築かれた石塁が、今もその姿を残しています。石塁の高さは約8.5メートル、約80度の傾斜で積まれており、当時の技術力と労力を垣間見ることができます。かつては、石塁が写真の右方向にある山の斜面まで続き、その間には城の南門があったと考えられています。

写真:新たに発見された水路
新たに発見された水路

南水門は、城の内部から水を排水していたと考えられますが、詳しいところはまだわかっていません。積み直しの際に新たに3つの水路が発見されています。

大礎石群〜巨大な建物の痕跡が残る

大礎石群跡
写真:大礎石群

こちらは、基山山頂に近い場所にある大礎石群です。礎石というのは、建物の土台となって柱を支える石のことです。かつてここには、高床式の建物が存在していました。

写真:大礎石群
戦前までは杉の木などがなく、見晴らしのいい場所だった。

建物の構造は校倉造(あぜくらづくり)と考えられ、その広さは約28メートル×約9メートルとかなり大きなものです。中には食料を保管していたと考えられています。基肄城には約40棟近くの建物跡が確認されていますが、こちらの礎石群は、群を抜いて大きなものです。
現在は戦後に植林された木で見えませんが、基山周辺の地域からもよく見える場所にあることから特別な意味を持っていたのではないかと考えられています。

ハイキングで楽しむ、よりディープな歴史散策

写真:南水門に近い東南門跡からの眺め
南水門に近い東南門跡からの眺め

基肄城の歴史スポットはその多くが、登山道の中にあり、散策しながらその姿を楽しめるのが魅力です。より深く基肄城の歴史を知りたいなら、南水門跡から山頂を目指すハイキングコースがおすすめ。

南水門跡のそばにある登山口から進み、東南門からの眺めを堪能したあと、米倉礎石群、鐘撞跡、つつみ跡に進みます。そこから土塁線の上を通り、境界石から東北門にぬけ、丸尾礎石群、大礎石群、基肄城跡のある山頂を目指すルートです。

山頂までは約1時間30分から約2時間。歴史を感じるハイキングを満喫できます。登山道は整えられていますが、起伏がある山道のため、足元は十分お気をつけくださいね。

米倉礎石群
写真:米倉跡礎石群

基肄城南東部の尾根の平場にあるのが、米倉跡礎石群です。炭化した米が出土したことから、そう呼ばれています。今も、米を蓄えた倉庫の基礎である礎石が残っています。

つつみ跡
写真:つつみ跡

防火のための貯水池、またはのろし台の跡だと考えられているのが、つつみ跡です。直径約18メートルの深い窪みがあります。

東北門跡
写真:東北門跡

東北門跡は4つあるうちの一つで大宰府にある朱雀大路を南に下った延長線上にあります。現在は門の礎石は保護されており一部しか確認できません。この門跡の手前から、土塁の上を通ると、つつみ跡や米倉跡、南水門跡につながっています。

丸尾礎石群
写真:丸尾礎石群

こちらは、斜面の平坦部分に、数棟の礎石建物が建っていた場所です。お米や武器を備蓄する倉庫だったと考えられています。

丸尾礎石群を過ぎ、大礎石群に近づくと、草原の広がる山頂が見えてきます。次は、山頂の見どころをご紹介いたします。

フォトジェニックな山頂散策

写真:基山山頂からの景色
基山山頂は絶景が広がる

基肄城の土塁跡や大礎石群だけでなく、絶景や約90年前に建てられた歴史的建造物など、基肄城にまつわるスポットを巡ることができます。
山頂へは、南水門からハイキングルートでのアクセスも可能ですが、体力に自信がない方は、基山公園(草スキー場)駐車場に車を停め、山頂周辺を巡るルートがおすすめです。駐車場から山頂までは、徒歩で約20分の山道ではありますが、途中には景色の良い東屋もあり、休憩しながらゆっくり登ってみてはいかがでしょうか?

天智天皇欽仰之碑(てんじてんのうきんぎょうのひ)
写真:天智天皇欽仰之碑

「日本書紀」にもその名が残る基肄城ですが、かつて人々から忘れ去られた時代がありました。そんな基肄城を国の史跡へ指定を目指し、約90年前の昭和8年、山頂にある展望所や通天洞(つうてんどう)と共に建てられたのが天智天皇欽仰之碑です。展望所は老朽化のため、現在は残っていませんが、こちらの碑と通天洞は山頂で見ることができます。
建設の際には、当時基山町の大人から子どもまで資材運びを手伝ったことから、地元の方には「奉讃塔」とも呼ばれているそう。

通天洞
写真:通天洞

かつて避難所として使われた通天洞は、ノスタルジックな雰囲気のある美しい建物です。2023年(令和5年)に歴史的風致形成建造物に指定されています。建築当初は1階建ての建物で、2階部分はその後に増築されたものです。現在は扉やドアはなく、外から美しい室内のアーチを眺めることができます。

いものがんぎ
写真:いものがんぎ

山頂西側にある凸凹した畝は、元々は基肄城の土塁でしたが、後の戦国時代に敵が峰の上をつたってこないよう、峰を垂直に切る堀切という加工がされています。その形状が芋畑の畝に似ていることから「いものがんぎ」と呼ばれています。実際に間近で見るとかなりユニークな形状です。

オキナグサ
写真:オキナグサ

歴史散策の合間に、山頂に自生するオキナグサも基山ならではの見どころの一つです。3月から4月にかけて花を咲かせ、その後は種子から白い綿毛を出して白髪頭の翁のような姿に変化します。現在日本では、絶滅危惧種に指定されており、自生する姿が見られるのはとても貴重です。

 

スポット情報(2024年4月19日現在)
スポット名 基肄城跡
住所 三養基郡基山町宮浦2166−1
駐車場 有(無料)基山スキー場前面広場を利用
 ※山頂までの道は林道のため、途中道幅が狭い箇所があります。
 
トイレ
アクセス JR基山駅から基山草スキー場前面広場まで 車で約15分(頂上まで徒歩15分程度)
関連リンク

基山町(外部リンク)

 

特別史跡 基肄城跡

詳細情報を見る

 

スポット情報(2024年4月19日現在)
スポット名 基肄城水門跡
住所 三養基郡基山町小倉2554
駐車場
トイレ
アクセス JR基山駅より車で約10分
県道17号線城戸ICより車で約5分
※車で通行の際は、途中道が狭くなっている箇所があるため、十分にお気をつけください。
基山・基肄城への登山・登城について(一部通行止め)(外部リンク)
関連リンク

基山町(外部リンク)

 

基肄城水門跡

詳細情報を見る

無料のボランティアガイドによる説明も!

写真:文化遺産ガイドボランティアの皆さん

基肄城の史跡をより深く知りたい方は、基山町の文化遺産ガイドボランティアを利用されてみてはいかがでしょうか?スポットごとの魅力を丁寧に案内していただけます。利用の際は、基山町教育委員会までお問い合わせください。

 

基山町文化遺産ボランティアガイド
問い合わせ先 基山町役場教育委員会 敎育学習課 ふるさと歴史のまち推進係
住所 三養基郡基山町小倉2554
電話番号 0942-92-2200
関連リンク

基山町文化遺産ボランティアガイド(外部リンク)

備考 ※メール・FAX・電話・教育委員会(教育学習課)窓口で申し込み可能です。詳しくは、上記記載の基山町教育委員会 教育学習課ホームページにてご確認ください。

基山を堪能した後は、ミシュラン掲載のスパイスカレー店へ!

Wスパイス

写真:Wスパイスの外観

基山の歴史スポットを楽しんだあとは、基山駅徒歩5分にあるグルメスポットへ足を運んでみませんか? Wスパイスは『ミシュランガイド福岡・佐賀2014 』に掲載されたこともあるスパイスカレーのお店です。

店主の重永さんが独自にブレンドしたスパイスから作る、本格的なカレーを味わえます。

写真:店内の様子
写真:外観
写真:Wスパイスの看板

基山駅からすぐ、長崎街道沿いにお店があります。どこか懐かしい雰囲気の建物は、かつてはタクシー会社だったそう。看板にも味わいが。通りにかすかなカレーの香りにワクワクしながら店内へ。

写真:店内に飾られているポスター
写真:レトロなテレビ
心くすぐるレトロ雑貨がいっぱいで待ち時間も楽しい。

ウッド調の店内は、レトロな雑貨や、ギターなどが飾られている昭和ロックテイスト! アナログテレビや所々にあるレコードも、懐かしい雰囲気を醸し出しています。

写真:カレー&ハヤシのあいがけ

メニューはシンプルなポークカレー、ハヤシライス、ちょっと辛いスープカレーなど。
トッピングの種類が豊富で、とんかつや唐揚げ、ゆで卵など好みに合わせて選べるのも嬉しいポイントです。ご飯の量も200グラムから500グラムの間で選択できます。

写真:カレー&ハヤシのあいがけランチタイムはサラダ付き
ランチタイムはサラダ付き

今回私は、カレー&ハヤシのあいがけ(750円)に、とんかつ(260円)をトッピングでいただきました。ご飯は普通盛りの300グラムでしたが、かなりお腹いっぱいになりました。とんかつも揚げたてでサクサク!ランチタイム(11時30分から14時30分)に注文すると、サラダがついてきます。

写真:カレー&ハヤシのあいがけ
甘いハヤシと中辛のカレーでお腹も大満足

中辛のカレーは、玉ねぎの甘みでまろやかな美味しさ。喉越し滑らかなルーは、手間暇をかけて作られていることがわかります。ハヤシライスは、お子さんも楽しめる甘いトマト風味。辛さが苦手な方にもおすすめです。カレーライスは、670円というリーズナブルな価格設定も嬉しいですね!

写真:スープカレー
10食限定のスープカレー(820円)は、辛いのが好きな方におすすめ!

ピリッと辛いチキンベースのスープカレーにほろほろと柔らかいチキン、スパイスがまぶされたゆで卵、かぼちゃが遊び心たっぷりに添えられています。食後はスパイスの辛さに思わず汗が出ます。同じものを頼んでもかぼちゃの大きさや表情など、ちょっとだけ違うのもスープカレーの魅力です。(記事内のメニューの価格は、全て普通盛ライス300グラムのものです)

写真:店主の重永さん
店主の重永さんは、一見クールに見えますが、時折出るジョークに心和む優しいお人柄。

店内は14席程ありますが、お昼のピーク時は、お客さんが列を作るほど人気です。ピークの時間をずらして訪れるのがおすすめですよ。
基山町を訪れた際は、ぜひ味わってみてくださいね!

 

スポット情報(2024年4月19日現在)
スポット名 Wスパイス
住所 三養基郡基山町宮浦222
営業時間 (昼)11時30分から14時30分
(夜)17時から21時
定休日 日曜・祝日
電話番号 0942-92-2540
駐車場 有(4台)
アクセス JR基山駅徒歩約5分
関連リンク

Wスパイス ホームページ(外部リンク)

Wスパイス(Facebook)

Wスパイス(Instagram)

 

Wスパイス

詳細情報を見る

今回は、基肄城の歴史と基山町にある絶品カレーのお店についてご紹介しました。JR基山駅から基山山頂へ向かうと、現代的な街並みから自然と歴史を感じる風景へと変わり、まるでタイムスリップしたかのような感覚で旅を楽しめます。ぜひ、基肄城のある基山町へ訪れてみてくださいね。

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sora camp

佐賀との県境で育った福岡県在住ライター。虫嫌いで運動音痴なのにキャンプ、サイクリング好き、休日は幼い娘と公園&食べ歩き。私の愛する佐賀は、佐賀平野の田畑を走る神埼北茂安線の風景。小麦畑、水田、収穫後の地平線と、季節ごとの変化がたまりません。

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