時代が明治となり、新しい国家をつくるために鉄道の必要性を説いた佐賀出身の大隈重信。日本の近代化を加速させた「高輪築堤(たかなわちくてい)」に触れてみましょう。
(2022年10月14日に新橋~横浜間で最初に鉄道が走った日から150年目を迎えました)
佐賀県立博物館 高輪築堤の再現展示
佐賀藩出身の偉人「大隈重信」。彼は二度の内閣総理大臣就任のほか、通貨「円」の制定、24時間365日制の太陽暦の導入、早稲田大学の創設など、日本の近代化に貢献しました。なかでも、大隈重信が新しい日本を創るために尽力した事業として「鉄道開業」があります。
31歳になっていた大隈重信は、❝国を一つにし、時代が変わったということを示すためには鉄道をつくらねばならぬ❞との思いから、東京での鉄道建設の必要性を唱えていました。しかし資金の問題や地元住民及び軍部の反対などさまざまな困難が発生します。特に用地取得は陸軍からの提供が得られず困難を極めていました。それでも、佐賀藩主・鍋島直正の❝西洋諸国に立ち遅れている我国は近代化を急がねばならぬ❞という志を胸に、大隈は大きな決断をします。それが❝陸蒸気(おかじょうき)を海に通せ❞というものでした。
当時の計画は、東京高輪の海上に高さ4mの石垣を築き、その上に線路を通すというもの。しかし、何度も波に崩され、建設は難航を極めます。それでも着工からわずか2年で石垣を積み上げることができたのは、佐賀藩の先進的な英知によるものでした。江戸時代、長崎港の警備を担当していた佐賀藩は、長崎港の神ノ島と四郎島を結ぶ約200mの海峡を埋め立て、立派な台場を完成させた実績がありました。この経験は、海上築堤という着想に大きな影響を与えたと考えられています。
明治5(1872)年9月12日。日本初の鉄道が新橋~横浜間で開業しました。総延長29kmのうち、海上に鉄道を通すために建設された約2.7kmの築堤が「高輪築堤」です。鉄道開業式典の時に走行した特別列車には明治天皇が乗車し、後続客車には大隈重信も乗っていました。この開通を目にした大隈重信はどのような気持ちだったのでしょう。海の上を走った日本初の鉄道は、これを機に全国へと張り巡らされていくのです。
そして平成31(2019)年4月、東京・高輪ゲートウェイ駅周辺工事の際に、「高輪築堤」が発見されました。その石垣の一部が、令和4(2022)年4月から佐賀県立博物館の敷地内にて再現展示されています。見事な石垣の石は品川台場や高輪海岸沿いの東海道の石垣からも転用され、海側と陸側で積み方を変えるなど、崩れないための工夫がされています。展示されている石垣は波当たりを抑えるために、ゆるやかな傾斜で積まれた海側を再現しています。石は実際に使われいたもので、触ることも可能です。
まずは、博物館内で鉄道開業までの道のりと、大隈重信の発想力や決断力を感じることができる映像を見学し、それから博物館屋外に実際の石を使って再現された「高輪築堤」へと足を運んでみましょう。そのドラマチックな登場ぶりに感動するはずです。
また、「高輪築堤」で使われていた石は、大隈重信ゆかりの地である大隈重信記念館と、早稲田大学系列校の早稲田佐賀中学・高等学校(唐津市)でも展示されています。
「高輪築堤」は、完成した150年前に近い状態で発見されました。東京高輪で発見された遺構は、「旧新橋停車場跡及び高輪築堤跡」として国の史跡に指定されましたが、調査の後、また埋め戻されています。今、「高輪築堤」の石垣を見ることができるのは、佐賀県立博物館だけです。今年は大隈重信没後100年、鉄道開業から150年を迎えます。明治という新たな時代を見据えて、国家づくりに取り組んだ大隈重信の大きな志を身近に感じてみませんか?
<佐賀県立博物館>
住 所:佐賀県佐賀市城内1-15-23(リンクをクリックするとマップが開きます)
電 話:0952-24-3947
営業時間:9時30分から18時
休 館 日 :月曜(祝日の場合は翌平日)、12月29日から1月3日
入 場 料 :無料
ホームページ: 佐賀県立博物館(外部リンク)<大隈重信記念館>
住 所:佐賀県佐賀市水ケ江2-11-11(リンクをクリックするとマップが開きます)
電 話:0952-23-2891
営業時間:9時から17時(※入場は16時30分まで)
休 館 日 :月曜(祝日の場合は翌平日)
入 場 料 :有料 ※詳しくはホームページからご確認ください。
ホームページ: 大隈重信記念館(外部リンク)<早稲田佐賀中学・高等学校>
住 所:佐賀県唐津市東城内7-1(リンクをクリックするとマップが開きます)
電 話:0952-25-7253(佐賀県文化課)
休 み:学校閉鎖期間があるため、詳細は佐賀県文化課へお問合せください。
※校内に駐車スペースはありませんので、付近の有料駐車場をご利用ください。
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