今年も来たぞ!発掘成果速報展2024「さがヲほる」
佐賀県立博物館において9月7日から10月14日まで、発掘成果速報展2024「さがヲほる」が開催中です!
……今年も来たぞと言われても、そもそも「発掘成果速報展」って何?という方も少なくないのでは。
ごく簡単に言うと「自治体や文化施設などが直近1年の調査の成果を発表する展覧会」です。史跡が豊富な佐賀県はもちろんのこと、全国各地のさまざまな団体が開催しています。
速報だけに、研究の最先端の中でもいちばんトンがった成果を一覧できるのがオモシロいところ。「さがヲほる2024」では、日本史の常識を変えちゃうかもしれない可能性を秘めた研究成果が発表されています!
そして前回2023年の速報展で話題を呼んだ、人気イラストレーター・くまみねさんとのコラボ展示も継続!ここでしか見られない猫たちの仕事ぶりもご覧ください。
実況!「さがヲほる2024」に行ってみた
展示会場は佐賀県立博物館3階です。佐賀県立美術館と隣り合っていますが、うっかり美術館へ入ってしまっても館内は渡り廊下でつながっているので大丈夫。
展示内容は
1.成果速報
2.映像展示
3.調査員のおススメ特集
4.令和5年度の県指定重要文化財について
…の4部構成です。
成果速報コーナー前にひそやかに置かれているリーフレットは忘れずにお持ち帰りください!!展示概要をコンパクトにまとめたすぐれものです。イラストで紹介する発掘現場のあるある豆知識もいい。
ここに注目!今年速報のオモシロポイント
速報展の企画を担当された佐賀県文化財保護・活用室の土井さんに、2024年のオモシロポイントを伺いました。
鳥栖市:門前古墳群(もんぜんこふんぐん)
土井さん
「ちょっと豪華な金ぴか装飾品など、佐賀の古墳としては珍しいアイテムが出土します。また古墳そのものの造りも全国的に珍しいもの。古墳壁面の内側と外側に石を組み込んだ構造があり、土砂崩れを防いでいると思われます。すぐ背後に山地がある鳥栖ならではですね」
古墳時代式の防災・減災の取り組みなんですね。なるほど。
こちらは古墳に埋葬されたものではなく、江戸時代に盗掘した何者かが古墳の中に残したのでは?と思われる灯明皿(油を入れて火を灯し、手元を明るくする道具)です。盗っ人のくせにライトを使うとは生意気な!
とはいえ不届き者の忘れ物のおかげで、江戸時代の人々の暮らしが見えてくるのもオモシロい。
上峰町:鎮西山城跡(ちんぜいさんじょうあと)
さがヲほるフォロワーの中には、昨年の2023年速報展に出展されていた「鎮西山城跡」のパネルが記憶にある方もいるのではないでしょうか。今回は激アツな続報が!
土井さん
「香炉などが出土することから、なんらかの宗教的な施設と考えられます。ここから出土するのは、大陸から渡ってきた白磁や青磁などの陶片。さらには、貴重な玳玻天目茶碗(たいひてんもくちゃわん)も出土しました。これらの出土品の持ち主がいったい誰だったのか、いまだ謎なんです」
天目茶碗といえば、喫茶の習慣とともに中国から伝わり、時の権力者にも珍重されたというアレですか…?ソレが見つかった鎮西山城跡は、もしかしたら歴史上のすごい重要人物がかかわっていた拠点なのかも…?!いろいろな可能性にワクワクしますね!
伊万里市:日峯社下窯跡(にっぽうしゃしたかまあと)
古くから重要な佐賀県産ブランド品だった鍋島焼にも、調査の結果さまざまなことがわかってきました。
土井さん
「日峯社下窯跡は、将軍に献上する鍋島焼を作っていた官製窯元です。廃棄品の破片などが出土しますが、どれも細かく砕かれており、米粒大ほどの破片も見つかっています。おそらく技術流出を防ぐためでしょう。鍋島焼が重要な工芸品としていかに厳重に管理されていたかが伝わりますね」
この展覧会では完成品として後世に残っているものと、出土した廃棄品の破片を比較して展示しています。双方に同じ柄が見られることに注目してください!精度の高いやきものが世に出るまで、試行錯誤が繰り返されたことがわかりますね。時代を超えて伝わる職人魂に、胸が熱くなります。
佐賀市:藤三郎屋敷遺跡(とうさぶろうやしきいせき)
土井さん自身もかかわり、佐賀県道路の建設に伴って発掘調査が行われた遺跡で、江戸時代の葬送の風習が見られるといいます。
木製の日用品があまりにも良い状態で残っており、これ本当に埋まっていたんですか…?と思わず疑いのまなざしを向けてしまう筆者。
土井さん
「実はこれらの出土品は、地下で完全に水中に浸かった状態で埋もれており、空気に触れずにいたため、分解されることなく現代まで残っていたんです」
河川に近い地域ならではの発見なのですね。なるほど~!筆者の疑い、解決!!失礼しました!!
令和5年度県指定重要文化財「仁田埴輪窯跡(にたはにわかまあと)」
速報展第4部では、研究が進むにつれて学術的に高い価値があることがわかり、新たに佐賀県の重要文化財に指定されたものを展示しています。
唐津市の「仁田埴輪窯跡」は、5世紀中ごろに埴輪を焼いていた窯の跡地です。現代でもやきものが有名な唐津で、そんなに昔から窯でやきものが作られていたなんて!
「円筒埴輪」は、側面につけられた模様の違いがポイント。筋状に模様がついたものと、格子状に模様がついたものが並んでいます。格子状の模様は、凹凸のある工具で埴輪壁面をたたくことで作り出しますが、この技法が見られる埴輪は全国的にも珍しいそうです。
素朴な表情がかわいい埴輪の犬も「仁田埴輪窯跡」の出土品です。佐賀発掘界のアイドルになるかも…?
発掘現場を猫がほる!ヨシ!
会場には発掘現場のみならず、さまざまな職場で働く人がなんとなく共感できるあれやこれやを解説したパネルが多数展示されています。
パネルに使用されているイラストは、くまみねさんが「さがヲほる」のために描き下ろしたオリジナル作品です。イラストは冒頭でご紹介したリーフレットにもしっかり掲載されていますよ!
映像展示コーナーの横に設置された等身大猫パネルは発掘現場の日常を再現したもの。発見したブツをまじめに検証する猫、どこからともなくやってきて眺めてるだけの他人事猫…。
猫たちに紛れて現場気分を体験してみるもヨシ。
トークイベントも大盛況でした
9月21日(土曜日)には発表会とトークイベント「さがヲほる人たち」が開催されました。
トークイベントでは、実際に発掘現場で日々を送っている文化財担当の皆さんが発掘調査のオモシロさなどを語り合いました。文化財担当者へのルートは、さがヲほる人を目指す学生さんにも気になる話題ですね。
「さがヲほる2024」の会期は残すところ2週間あまりです。どうぞお見逃しなく!
佐賀県立博物館は常設展示も面白い!
「さがヲほる」に足を運んだら、ぜひ常設展示のフロアもご覧ください。
今回ご紹介する展示はすべて無料で公開されているので、気軽に立ち寄りできますよ。
博物館3階:2号展示室
ここでは、旧石器時代から明治維新までの佐賀県域の歴史を、さまざまな資料で紹介しています。「さがヲほる」に来場された方なら、興味深く見ていただけるはず!
博物館2階:1号展示室
「地質」と「生物」のコーナーにわけて、佐賀の自然史を紹介するフロアです。標本やジオラマなど、見て楽しい展示品がいっぱい。
近年の図鑑などに載っているティラノサウルスとは様子が違う…でも、昭和時代に子どもだった大人は大喜びしそう!
この模型は、東京都の国立科学博物館に展示されていたもので、1970(昭和45)年に佐賀県立博物館開館記念として寄贈されたそうです。50年前、恐竜はこんなスタイルだと考えられていたんですね。
博物館1階および館外:日本を拓いた鉄の道「高輪築堤(たかなわちくてい)」
1階ロビーには、2018年に開催された「肥前さが幕末維新博覧会」の一部を再構成して展示しています。
また2022年からは、佐賀の偉人・大隈重信が建設に力を尽くした「高輪築堤」をドラマ映像やパネルで紹介しています。
館外には東京・高輪ゲートウェイ駅周辺工事の際に発見された「高輪築堤」の一部を再現展示しています。
ロビーの展示を見たあとは、こちらにもお立ち寄りください。
注目の展覧会はこれからも。佐賀県立博物館・美術館から目が離せない!
2024年後半も、佐賀県立博物館および佐賀県立美術館では注目の展覧会が続々と企画されています。
11月30日からスタートする「ロマンシング佐賀10周年企画展」は、有田焼絵付大皿やイラスト原画などサガシリーズファンなら絶対に見逃せない展覧会です。
また佐賀県立美術館では12月6日から「特別展 桃山三都」が開催されます。ふだんは唐津市の名護屋城博物館に展示されている「黄金の茶室」が佐賀市にやってくる貴重な機会です!
ぜひ、佐賀県立博物館・美術館へお出かけください!
スポット名 | 佐賀県立博物館・佐賀県立美術館 |
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住所 | 佐賀県佐賀市城内1-15-23 |
電話番号 | 0952-24-3947 |
会館時間 | 9時30分から18時 |
休館日 | 月曜日(祝日の場合は翌日) 年末年始(12月29日から1月1日) ※このほか臨時に休館することがあります |
駐車場 | あり |
アクセス | 【公共交通機関】 JR佐賀駅から佐賀市営バスで約15分 ※「博物館前」(博物館・美術館まで徒歩すぐ)、「サガテレビ前」(徒歩2分)又は「県庁前」(バス停そばのお濠を渡って直進徒歩10分)の各バス停をご利用ください。 【車】 佐賀大和インターチェンジから約25分 |
備考 | 佐賀県立博物館・佐賀県立美術館(外部リンク) |